金属バットの快音は響けど.....「江川流マウンドの心理学」
1.高校野球に熱くなった日々
私が高校野球に熱くなった時期は2度あります。
1973年の春・夏の大会ですね。
二度目は徳島の池田高校が出てきた時。
よくあの頃のことを混同してしまうんですが、「さわやかイレブン」は1974年のことで、あの攻めダルマ蔦監督に率いられてガンガン打っていた池田は1982年~1983年のことでした。
若干の期間が空いてました。
で、1982年の池田はそれはもう打ってましたね。
あの時は早実のスター、いや全国のアイドルの荒木大輔をボコボコにしてしまいました。
応援している側からすると、爽快でしたね・・荒木君には可哀想だったけど。
2.金属バットの快音
そしてこの時、印象に残ったのがあの金属バットの「カキーン~」という金属音です。
池田のバッターがあまりにもガンガン打ったので、ほんとあの音は耳に残っています。
でも江川の頃はまだ金属バットではなかったんですね。
今更ながら知りました。
金属バットではなかったから江川のあの快投があったという意味ではありません。
江川の次の年から金属バットが導入され、今では学生も社会人も金属バットです。
飛距離も出るしホームランも量産されるようになったのでしょう。
でもイマイチ、野球が大味になった感は否めません。
高校野球を観ていて簡単にホームランが出るのを見ると、それでいいとはさすがに思えませんでした。
あくまで私個人的には、ですが。
こういうのは好みの問題もあるでしょうしね。
でもなぜかプロ野球は木製バットのままです。
プロは木製なのに、なぜその前の段階である学生・社会人は金属なのか、私には理解できません。
なんででしょう?
不思議ですよね・・・
3.内角打ちとシュート
江川卓氏はその著書「江川流マウンドの心理学」の中で著しています。
今のプロの世界では「内角打ち」の技術が著しく低下しているんだそうです。
その理由が金属バットにある、と。
金属バットだと飛距離が伸びるのに加え、内角に差し込まれても振り抜けば打球は詰まりながらもセカンドの頭を越えるという点にあります。
つまりインコースだろうとアウトコースだろうと同じフォームで打ててしまうので、内角打ちをわざわざ習得する必要がないということなんですね。
そして内角打ちを知らずにプロ入りすると当然、苦労する、と。
そして内角打ちが未熟なバッターが多いのだから、シュートをマスターすべき、シュートが最強の変化球になる、と説明します。
そういえば随分前、シュート打ちの山内一弘さんとか、それで有名でしたからね。
野球の本を結構、読み漁っていた自分としてはよく覚えています。
それだけシュート、内角に差し込んでくるボールをうまくさばいてヒットにするというのは、技術が必要なのでしょう。
確かに実際に野球をやっていると感覚的によくわかります。
内角のボールにはより早く反応する、スイングを早く始動しないといけないため、それだけボールを見極める時間が短くなりますし、近いボールには腕を伸ばしては対応できないため、どうしても窮屈な打ち方になります。
かなり高度な技術が要求されるでしょうね。
この江川本ですが、江川の凄さ、怪物ぶりを書いた本とは違って、野球における水面下の駆け引きや心理戦などについて事細かく書かれていてとても興味深いです。
今どきフォークやスライダーではなく、シュートをマスターすることを勧める人も珍しいでしょう。
他にも、野球少年は子どものうちに硬球に触れたほうがいいとか、面白い提言もされています。
4.あとがき
少年時代はやはりホームランを打てる選手に憧れましたし、凄いと思っていましたが、この数年は走れる選手、機動力のある選手、出塁率の高い選手がいい選手、という風に自分の中でも選手を見る際の基準が変わって来ました。
この本を読むとやっぱりプロは凄いなあと思います。
試合に出ていないときに皆、どれくらい勉強したり相手を研究したりしているのか、そういった点に興味が湧いてきます。
野球観戦もちょっと違った角度から観てみたいと思いましたよ・・・楽しみですね。
「運命を変えるような大勝負場面にきたとき、相手の弱点を計算に入れるのは二流の監督なんです。一流監督は、味方の弱点を計算するものなんですよ。」三原修(本書より)