蝸牛の歩み

日々の雑感を書き留めています

最高年俸の柳田悠岐とセイバーメトリクス

日本球界で最高の打者、というと私の世代なら古くはON(王さん、長嶋さん)をすぐ思い浮かべますし、最近では、イチローでしょうかね。

 

打率をみれば張本なんかも入ってきますよね。

 

忘れていけないのは野村克也、古くは川上哲治

 

いやいや3冠王3度の落合がいるでしょう。三冠王を三度は凄い。

 

そしてランデイ・バースもいますよ。

 

これらはやはり打撃成績を見て名前を挙げる選手たちなわけです。

 

一方、印象とか人となり(変人とか)、とかその他の要因も併せて思い起こせば、私なんかは榎本喜八さんなんか印象に残っています。

ユニークな方でした。

彼の伝記も読みましたからね。

榎本さんも安打製造機と呼ばれたバッテイングフォームの美しい好打者でした。

 

 

1.最高年俸の柳田悠岐

 

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現在、打者で最高年俸をもらっているのはソフトバンク柳田悠岐です。

 

2020年オフには日本人野手史上最高額の年俸6億1,000万円(推定)で契約更改しました。

 

ちょっと前まで1億円を超えただけで驚いていたのが懐かしいくらいです。

 

年俸で6億ですからね。

 

柳田は2010年のドラフト2位。

 

当時の契約金7,000万円、2011年の年俸1,200万円です。

 

2016年に2億7,000万円と大台に乗せてから5年でついに野手最高年俸ですよ。

 

でも彼の2020年シーズンの成績はというと、

 

119試合 427打数 146安打(最多安打

打率 .342 (2位)

本塁打 29本 (3位)

打点 86打点 (3位)

90得点 (1位)

出塁率 .449 (2位)

 

この成績だけ見ると野手の中で最高・・・というわけでもないですね。

 

 

2.セイバーメトリクス

 

セイバーメトリクスというのは、野球のデータを統計学的見地から客観的に分析し、選手の評価に使ったり、それから戦略、球団経営などを考えるための分析手法のことです。

 

セイバーメトリクスを扱った映画としては「マネーボール」がありますよね。

 

ビリー・ビーンGMブラッド・ピットが演じたあの映画です。

 

マネーボール」の中では、例えば、

 

選手・チームの攻撃力を測る指標として従来の打率・打点を用いず「アウトにならない率」である出塁率を重視していました。

 

それから、速球派のピッチャーをクローザーにしてセーブをたくさん稼がせ、セーブを評価している球団にトレードして代わりに有望な選手を獲得するとか、チームの総得点・総失点から勝利数・敗北数を予測、予測値に従い選手の補強・解雇を行ったりとセイバーメトリクスを活用していました。

 

他にも「選手の得点能力を指標化」「ピッチャーの投球・プレーから運の要素を除外して評価」という手法も紹介されていました。

 

今の時代の野球ではもう当たり前なんでしょうけど、当時は斬新でしたねー

 

この手法を使えば素人でも(あるいは私でも)監督になれるんじゃないかと思ったりしましたもの・・・

 

 

3.柳田悠岐セイバーメトリクス

 

ではこのセイバーメトリクスを使って柳田を評価するとどうなるのでしょう。

 

WAR(Win Above Replacement)=そのポジションの代替可能選手に比べてどれだけ勝利数を上積みしたかを表す指標では柳田は、8.4

2位の坂本(巨人)は、5.7なので突出していますよ。

 

OPS(On-base Plus Slugging)=選手の攻撃力を評価する指標。出塁率長打率の和が選手の大雑把な得点力に相関するという仮説の元生まれた指標では、柳田は、1.071

2位がヤクルトの村上の1.012ということですからこれも大差をつけていますね。

 

まあでもこのOPS、王さんはもっと、いや断然凄いんですけどね。

 

1974年には、なんと 1.24761 という歴代最高記録を叩き出しています。

 

ちなみに4000打数以上の打者の通算成績でもトップは王さんで、これまた 1.07999とただ一人「1」を超えてダントツトップです。

いや凄まじい。

 

ま、王さんは別格として昨シーズンの柳田は素晴らしい結果を残しているわけです。

 

ISO(長打率)wOBA(1打席あたりどれだけチームの得点増加に貢献したか)などなど、あらゆる打撃指標でトップなんです。

 

注目したいのは、Clutch という指標。

 

これは、WPA(Win Probability Added)という、その選手がどれだけ勝利確率(WE:Win Expectancy)を増減させたかによって貢献度を評価する指標を元に、より公平に「チャンスに強いバッター」を測る物差しとでもいったものでしょうか。

 

Clutch=(WPA/pLI)−WPA/LI

※pLI : LI (Leverage Index) の平均

 

英語の clutch クラッチ には元々「つかむ、握る」という意味がありますが、他に「(スポーツなどで)ピンチに強い」という意味もあり、ここから来ているのでしょうね。

 

ピンチならぬチャンスに強いバッターをクラッチバッターとも呼びますよね。

 

LI というのはLeverage Index レバレッジインデックスの略。

 

レバレッジというと「てこの作用、てこ入れする」という意味がありますが、「(物を動かすための・目的を達成するための)力」「(目的を達成するために人々に与える)影響力」という意味もあります。

 

で、レバレッジインデックスというのは、例えば「8回表、2対3で負けている2死二、三塁の場面はどれだけ重要か?」といった、その場面の重要度を数値で表す指標なんです。

 

よってWPAをLIで割るということは「重要な場面に立つバッターのWPAは高い、しかしそれはバッターの打順などにより、重要度が高い場面に立ちやすいから。だからそういう場面に立ちやすいというような要素は割り引こう」ということなんですね。

 

で、WPAとその差を求めることで、場面の重要度によって積み上げられてきたWPAが残り、それを勝負強さの指標としようというのがClutchということになります。

 

例えば打順が1番2番のバッターはそもそもチャンスに打席に立つ機会そのものが少ない、なのでそういったばらつきをなくし、真にチャンスに強いバッターを探し出そう、ということなんですね。

 

いやあ感心しました。

 

今までの打率、本塁打、打点、得点の世界からこんなに進化していますよ。

 

でもセイバーメトリクスは、様々な不公平となる要因を排除して真の姿を描き出そう、という試みなんですね。

 

で、このClutchにおいても、柳田は2.02で12球団トップなんです。

 

つまり柳田はチャンスの場面では更にその凄みが増すバッターなんだということを表しているんですね。

 

従来の指標だけでは測れない柳田の凄みがようやくわかりました。

 

納得~という感じですね。

 

こういうことがわかると、これまで以上の興味を持って柳田は勿論、各バッターを観られるわけですよね。

 

面白いです!